ハルにそう言われてフンッ、と鼻で笑った本多医師は緩んだ顔を引き締めた。
「そん時のヨウの気持ち……すげぇわかるんだよ。
ずっと…『俺』を見てほしかった。医者だからとか、跡取り息子だからとかじゃなくて、俺自身を見てほしかったから。
ヨウは自分の素姓を隠してたけど、それでも嬉しかっただろうと思う。
だけど…そんな浮かれ気分はそう長くは続かなかったよ」
「え…?」
「バレたんだ。ヨウの親父に。何もかもな。
事故ったことも責任感じて代わりにバイトしてることも」
「それで…どうなったんですか??ヨウ…」
恐る恐る聞いた俺の質問に、本多医師は眉を寄せて険しい顔付きになった。
「金、持って現れた」
「金!?」
「あぁ…。親父さんの秘書が賠償金と銘打った口止め料を持って現れた」

