「まさか…バカになんてしてませんよ」


本気で怒るハルから目を逸らし、カルテに記入しながら本田医師は続けた。


「でも…意味がありますか?」


「……は?」


「答えのない問題を解く意味がありますか?」


「…どういう意味だ?」


記入を終えたカルテをパタン…と閉じると、ハルを真っ直ぐ見つめて本田医師は“正論”を口にした。


「『何でこんなことになったんだろう?』

『何が原因なんだろう?』

『俺のせいじゃないだろうか?』


………そう思われませんでしたか?」


「……………。」


「そう思って悩んだところで…ここにあるのは『結果』だけです。こうなってしまった結果だけ。

『答え』はないんです。

だって……その『答え』はサツキにしかわかりませんから」