「若松さん、泉田は今どこにいますか?」

用件をさっさと済ませたいと言わんばかりに、警部は範子へ直球を投げかけた。

「そうですねぇ…」

範子は壁にかかっている時計を見た。

「出かけたのは1時間ほど前ですが、夕方には戻ると言ってました」

泉田浩がここにいた!?

あたしと警部は再び顔を見合わせた。

そんなあたしたちを尻目に、範子は台所へと向かった。

やがて彼女は、お盆の上に麦茶の入ったグラスを2つのせて戻ってきた。

「若松さん、泉田がここにいたというのは本当ですか?」

テーブルにグラスを置きながら、範子はうなずいた。

その自然な所作からは作為は感じられず、嘘をついてる様には見えなかった。

「失礼ですが、泉田がどういう人間かはご存じですか?」

「ええ」

泉田と知り合ったのは数年前。泉田の素性は、周囲の人間や本人の口から聞いていた。

「刑事さんたちがここに来られたということは、また何かしたんでしょうね、あの人」