「それは残念だな。せっかく来たのによ」
彼は立ち上がり、私に背を向けてしまっている。だから、どんな顔をしているのかわからない。
 でも、こっちの表情も見られないのは助かる。
「どーゆーことよ?」
「言葉のまんま」
「それだと。まるで、その…、えっと」
「お前に会いに来た?」
ドキリと胸が高鳴った。
 ゆっくりと彼がこっちを振り向く。
 あの時に見せなかった、真剣な顔。
「その通りだよ。この1年、お前のことでいっぱいだったんだぜ。バカだろ」
困ったように笑う彼。
 いろんな表情を見せてくれる彼。
 私は醜い顔を見せてばかり…。
 怒っては、やっぱりまた怒って。
 ダメだなぁ、私。
 私は俯いた。なんか、顔見られたくない。
「…バカじゃ、ない、よ。…私、も、そうだから」
途切れ途切れながら言った私の言葉は、彼にどう聞こえたのだろうか?それ以前、ちゃんと伝わったかな?
 チラッと彼を向く。
 そこには、口を押さえ、真っ赤になっている彼。
 気まずそうに、目が泳いでる。
 可愛い。
 その顔を見て、私は思わず笑みがこぼれた。
「なに、笑ってんだよ!」
「可愛いなぁ」
顔を赤くしたままムキになる彼は、とても可愛かった。
 照れて真っ赤になる彼。からかうととっても面白い。
「んで、どうなんだよ。答え」
視線を逸らす彼。照れ隠しね。そんなんじゃ、教えない。
「え~?なんのこと?」
「だから!」
ムキになってこっちを向く彼。
 今がチャンスね。
 大切なことは、面と面を向かって言いたいから。
「好きだよ」
彼の目を見て、私の気持ちを伝える。
 本当は逃げ出したいくらい恥ずかしい。でも、逃げ出しちゃダメだ。
 桜がユラユラと、私たちの間を舞う。
 この距離が、もどかしい。
 なんて思ってると、急にグイッと引き寄せられた。
 体に広がる、心地いいぬくもり。
「すんげぇ、嬉しい。俺も、好き」
耳元でささやかれる彼の声は、とても嬉しそうだった。
 突然のことで固まっていた私は、彼の背に手を回して、抱きしめ返した。
 言葉で言いあらわせないぐらいの幸せな気持ちが、私を埋め尽くした。