「友達んち行くつもりだったんだけど、どうやら降りる駅、間違えたらしい」
と言うと、彼は私に駅の名前をいい、道のりを訪ねた。
 彼が言ったのは、ここよりひとつ次の駅だった。ここから遠い駅で、こんな田舎に比べたら都会にある駅の名前だった。
 こうして普通に話しているけど、結局彼は私なんかと違う人間なんだと、この時やっと自覚した。
 身分とかないこの国では、都会人と田舎者の二つに分かれている。
 当然、田舎者はバカにされる。
 結局、そう言うことなのだ。
 腕時計を見ると、そろそろ電車の来る時間だった。
 いつの間にか、長い時間が過ぎていた。本当に、気づかないうちに。
「腕時計って…!携帯はどうしたんだ?」
「携帯?あぁ、たぶん家だよ。ないってことは」
携帯を持ち歩いても、メールも電話も来るわけじゃない。携帯電話って、緊急時には必要だけど、その他の時に必要かな?
 なんて思ってるのは田舎の中でも私だけらしい。
「ほら、電車が来たよ」
目の前の線路に、電車が入ってくる。
 なぜか、胸がチクリと痛んだような気がする。
 けど、気のせいでしょう。
「みたいだな。じゃあな」
彼が立ち上がると、またベンチが少し音をたてた。
 見知らぬ誰かさんが去るだけなのに、これ以上ないくらいの孤独感を味わった。
 まるで、私一人だけがこの世界に取り残されて、みんな消えちゃったみたいな。
 思い込みなのはわかってるけど、そんな気持ちなんだもの。
 私はデジカメをかまえた。液晶の画面越しに彼を見る。
 桜の花びらの中に消えていく、彼の背中。私は、シャッターを押した。
 ドアが閉まる音。電車が出発する音。走り出す電車。
 全てが、コマ送りのように見えた。
 液晶画面に映し出された、彼の背中。切り取られた、時間のようだった。