「小さい頃は、
活発で明るい子
だったんです。
悪戯もワガママも
酷くて、
頭を抱えたものです。
それが、
今の体になってからは、
ガラッと変わって
しまって…
ワガママの一つでも
言ってくれたら、
どんなに楽だったか。
あの子なりに、
私達を気遣っていたん
だと思います。
けど、
その姿が私達からしたら、
痛々しくて仕方なかった。
そんな子が…
そんな姫乃が、
突然結婚したいと
言いだした…
びっくりしたよ。
必死に私達に訴えかけて
くる姿が、
凄く眩しかった。
ようやく自分の人生を
取り戻した…
そんな風に見えたんです。
あんな姫乃を見たのは、
ほんとに久しぶりで…
涙がでるくらい嬉しかった。
そして、
それと同じくらい
寂しかった…」



彼女の父は、

話を止めると、

姿勢を正した。



そして、

僕の目をジッと

見たあと、

深く頭を下げ言った。



「姫乃を…
宜しくお願いします」



その彼女の父の姿に、

僕は目の奥が

熱くなるのを感じた。



「はい…」


その一言だけを返し、

僕もゆっくりと頭を下げた。


いや…

一言しか、

言葉がでなかった…