その時だった。 窓は開いていないはずなのに、レースカーテンがひとりでに揺れた。 風に吹かれるように、大きく。 「え…」私は耳を疑う。 一瞬、聞こえたのだ。 誰かが私を呼ぶ声が。 凛子、と。 あの声は────────。 それからレースカーテンが揺れることはなかった。