それにしても。

どうして俺はここにいるのだろう。

食卓に並べられたカニクリームコロッケの匂いがリビングの中を漂う。


「三浦君だっけ。遠慮しないでいっぱい食べなさいね」


そういって前田の母親がにっこりと八重歯を覗かせた。

前田の遺伝は母親から引き継がれたんだな。
よく話すところと笑った顔が前田にそっくりだった。

それと正反対に父親はというと無口な方で、大人しくビールをちびちびと飲んでいた。

まあよくある、典型的な家族だ。


──俺の家で夜メシ食っていけよ。


サイクリングロードで走った後、前田の強引な押しに負けてついつい来てしまったが、こうして前田の家族と食卓を囲んでいるのがなんだか妙な感じだった。

前田とはさほど仲が良いわけでもないのに。


「あれ、真里は?」


前田が気付いたようにいった。

真里、とは前田の妹らしい。