満点の星空の下、生温い風が二人を優しく包んだ。

凛子はポケットに入っていた小瓶からこんぺいとうを二つ取り出し、その内の一つを俺に渡した。

口に放り込むと、甘い砂糖の味が広がった。

凛子はもう一つのこんぺいとうを空に掲げて、本物の星と照らし合わせた。


「この星全部がこんぺいとうだったらいいのにな。いくらでも食べれちゃう」


ふふ、と冗談交じりに笑う。


「凛子の頭の中はいつも食べ物ばかりなのな。太るぞ」


憎まれ口を叩くと、今度はふてくされる凛子。

十何年一緒にいても、表情がころころと変わるところは見ていて飽きない。

金時計は夜の10時を指している。

この顔を見られるのも、あと少しか。

そんな風に考えていたら、凛子がこちらを見ていた。

そして、少し俯いて寂しそうな表情を浮かべる。


「もう、時間が…ないの?」