かけがえのないキミへ




ドアを少し開けると、父親ではない、女の人の甘い声が聞こえてきて、俺はドアの隙間から覗いたんだ。


薄暗かったが、月の光でうっすらと見えた。
ベッドの上で裸で何かをしている父親と女の人を。
俺は訳が分からず、口を開いたまま、ただ突っ立っていた。



…どうして?お父さん。

この頃から、俺は父親という存在がなんなのか分からなくなったんだ。


『怜?』



梨花の呼びかけで現実の世界へと戻ってくる。
俺は梨花に優しく微笑み、目を閉じた。



『…おやすみ…』



今でもあの光景が忘れられないでいた。
でも、あの時父親に抱かれていた女の気持ちがわかる気がするんだ。


ただあの女の人は、寂しくて、誰かの温もりが欲しかったんじゃないかって。
俺の隣でスヤスヤと寝ている梨花にだって言える。


加奈にだって、先生にだって。