『…綾音…』
俺はその手紙を手に持って、もう一度読み返した。
読み返しても同じ内容。それが単純に嬉しくて。いや、綾音が俺のためにおにぎりを作ってくれたことに対して嬉しくて…
涙が少しだけ出そうになった。
俺はラップを綺麗に剥がし、おにぎりを掴んだ。俺の手より小さいおにぎりは、綾音の手の大きさと同じで…
海苔やそんなものなんて巻かれていない光沢のあるご飯粒がいつもより美味しそうに見える。
そして俺は一口おにぎりを口に含んだ。
少し塩が強いのか、しょっぱかったけれど、とても美味しい。
おにぎりなんて久しぶりだよ。しかも手作りなんて…
俺は一口一口噛み締めながらおにぎりを全て食べた。
十分だ、十分すぎる。
今の俺にとって、このおにぎりだけで。
綾音は優しいから、
こんな最低な俺にまで優しくしてくれるんだね…
俺はおにぎりを食べたあとでも、その手紙を何度も何度も読み返した。

