かけがえのないキミへ



結局俺だけか…
ちょっと期待なんかしたの。

俺も綾音がいるベランダから出ていき、綾音の隣に並んだ。

綾音は相変わらずシャボン玉を飛ばしていて、とても楽しそうだ。

こんなに近いのに、
心は遠い気がした…


『シャボン玉、好きなの?』


こう俺が尋ねると、綾音はスカートのポケットから携帯を取り出して文字を打つ。


《お母さんから最初に買ってもらったのがシャボン玉なの》


『お母さんか、そっか。だから楽しそうなんだね』


俺が笑顔を見せると、綾音は俺から視線を逸らして、下を向いた。
その表情がとても暗くて、なにか隠しているようだった。

だが綾音はすぐ顔を上げまたシャボン玉を飛ばした。


七色に輝くシャボン玉。綺麗すぎるシャボン玉。

だけどそのシャボン玉たちはちょっとしたら儚く消えていくんだ。


天には昇らず、すぐに消えてなくなってしまうんだ…