かけがえのないキミへ



喜ぶとかまじ最悪だろ。俺は自分を責める。
すると綾音が俺の腕を叩いて、ホワイトボードにまた文字を書いていった。


《竜也くんに一緒に住んでること、内緒にした方がいいかな?》


丸くて可愛らしい綾音の文字は、俺の心臓を元気よく弾ませる。


『…無理だろ。いつか絶対バレるから、言った方がいいよ。だって疚しい関係じゃないし…』


自分で言った言葉は、自分を苦しめる言葉だった。
確かに疚しい気持ちなどないが、俺は綾音が気になっている。
これって疚しい気持ちって言うのかな?
いや違うな。
これは素直な気持ちだ。

綾音は分かってくれたようで、笑顔を見せてペンのキャップをしめた。
そしてまた手に握っていたシャボン玉の蓋を開けて、ベランダへと出てシャボン玉をし始めた。



綾音はなにも思っていないのかな?

俺は綾音の小さな背中をしばらくずっと見つめていた。