竜也は明らかになにかを隠している。
俺も体を起こし、竜也の背中を足で蹴った。
『なんだよ?』
『俺さ…一回もあやちゃんを送って行ったことないんだ…』
コントローラーを片付ける竜也の背中がすごく寂しそうで、また胸が苦しくなる。
『…なんで?』
『送らなくていいって言うんだ…俺ってそんな頼りないかな?』
やっぱり…綾音は俺と同様、送っていく行為にひどく拒んだ。
彼氏である竜也に対しても。
なぜだろう?
まだ喉にある骨はとれてくれない。
『じゃあいつも時計台で別れてんの?』
『ああ、時計台に着いてバイバイってしてから、あやちゃん、走って帰っちゃうんだ』
『ふーん…』
俺は近くに落ちていたふわふわのクッションを掴み、竜也の頭目掛けて投げた。
見事、そのクッションは竜也の頭に当たった。
でも竜也は無反応。
そんな悲しんでんの?

