あーでもない、こーでもないとやってるうちに時間はどんどん過ぎていく。 「くっ…ネクタイ恐るべし!」 「…もう適当にやっちゃおうよ」 と、雅が言った時、階段をパタパタと上がってくる音とともにバン!と勢いよくドアが開かれる。 「誠!雅!いつまで支度してるのっ!」 二人と同じ色素の薄い茶色の髪と瞳。 腰までの髪を横で結びフリルの付いたエプロンを着て、ぷくーと頬を膨らませる小動物のようなこの人は母の百合(ゆり)。