2002年7月。
その年は特に暑かった。
夏の到来を祝い、ただひたすらに蝉が鳴き続けていた。
何かが起こりそうな夏だった。
今年ももうすぐ夏休み。
私の家は夏になると必ず家族で旅行に行く。私も
弟ももう高校生になっていたが、夏の家族旅行だけは欠かしたことがない。
しかもここ数年は必ず行き先が決まっていた。
太平洋に浮かぶ小さな島「沖津島」だ。
「今年も沖津島に行くんだろ?」
私は父に聞いた。
「天気がよかったらな。また台風が来るかもしれないしなぁ。」
沖津島は太平洋の真ん中にある。
台風が来ると時化で渡ることはできない。
私は高校二年生で、来年に受験を控えていた。
もし今年行くことがなければ、来年以降は沖津島へは行かないかもしれない。
大学生になって家族旅行に行くとは限らない。
つまりこの年が沖津島へ行く最後の機会かもしれないと思っていた。
「日本の南の海上で台風が発生しました。」
しかも8月5日に日本列島へ上陸の恐れがあるということだった。
「今年は無理だな」
父が言った。
私達の予定では、5〜7日に沖津島へ行くのである。
私は今年の旅行は諦めかけていた。
もう沖津島へ行くこともないだろう。
そう思うと少し寂しかった。
しかし、台風は中国へと進路を変えた。
これが最初のキセキだった。
海は凪いでいた。
空も雲一つない晴天。
青一色の景色が目に眩しい。
沖津島までは片倉港から連絡船で1時間半。
しかも片倉港までは私の家から8時間。
計10時間もかかるのである。
連絡船は青い海の上に白い軌跡を描きながら飛ぶように沖津島へ向かった。
トビウオが跳ね、シイラが海中を走る。
旅の疲れは一気に吹き飛んだ。
そして、沖津島の港が目に飛び込んできた。
珊瑚の群生する海は、青の中に様々な色を含んでいた。
全てが美しいこの島での3日間が、これからの私の人生で最も重要な意味を持つとは、微塵も予感していなかった。
その年は特に暑かった。
夏の到来を祝い、ただひたすらに蝉が鳴き続けていた。
何かが起こりそうな夏だった。
今年ももうすぐ夏休み。
私の家は夏になると必ず家族で旅行に行く。私も
弟ももう高校生になっていたが、夏の家族旅行だけは欠かしたことがない。
しかもここ数年は必ず行き先が決まっていた。
太平洋に浮かぶ小さな島「沖津島」だ。
「今年も沖津島に行くんだろ?」
私は父に聞いた。
「天気がよかったらな。また台風が来るかもしれないしなぁ。」
沖津島は太平洋の真ん中にある。
台風が来ると時化で渡ることはできない。
私は高校二年生で、来年に受験を控えていた。
もし今年行くことがなければ、来年以降は沖津島へは行かないかもしれない。
大学生になって家族旅行に行くとは限らない。
つまりこの年が沖津島へ行く最後の機会かもしれないと思っていた。
「日本の南の海上で台風が発生しました。」
しかも8月5日に日本列島へ上陸の恐れがあるということだった。
「今年は無理だな」
父が言った。
私達の予定では、5〜7日に沖津島へ行くのである。
私は今年の旅行は諦めかけていた。
もう沖津島へ行くこともないだろう。
そう思うと少し寂しかった。
しかし、台風は中国へと進路を変えた。
これが最初のキセキだった。
海は凪いでいた。
空も雲一つない晴天。
青一色の景色が目に眩しい。
沖津島までは片倉港から連絡船で1時間半。
しかも片倉港までは私の家から8時間。
計10時間もかかるのである。
連絡船は青い海の上に白い軌跡を描きながら飛ぶように沖津島へ向かった。
トビウオが跳ね、シイラが海中を走る。
旅の疲れは一気に吹き飛んだ。
そして、沖津島の港が目に飛び込んできた。
珊瑚の群生する海は、青の中に様々な色を含んでいた。
全てが美しいこの島での3日間が、これからの私の人生で最も重要な意味を持つとは、微塵も予感していなかった。