「何の話だって訊いてんのにっ。何をいきなりキレてんだよ」
キッチンの前に立ったヒロに文句をたれた。すると、背中を向けたまま応えた。
「本人に言う前に温人君に伝えても仕様がないでしょ? ってこと」
語尾を強められた。
「逢坂さんから何か聞いたの?」
「聞いたよ。『誰にも渡さない』って梓真に啖呵切られたって」
ヒロの声は少し震えてるように聞こえた。
その時、俺の中でくすぶっていた物が再び熱を帯びだしたように感じたんだ。
なぁヒロ……今なら伝えてもいいかな?
千尋と終わって迷いも捨てて、今なら俺の話を聞いてくれるか?
「温人君に言う前にちゃんと言ってよね。あたしに」
「……じゃあ、俺が本心を伝えたならヒロも教えてくれる?」
「何を?」
「ヒロの、本心を」
確証なんてない。だからドキドキしていた。
でも、もう限界だ。
言わずにいられっかよ。



