初恋の向こう側


こんな風にオサに説教されるのなんて、俺達の付き合いが始まって以来じゃないかな。

好きな女を放っといていいわけなんて……ないよ。


「千尋とは別れるよ。納得はしてくれないだろうけど、きちんと話そうと思ってる」

「そっか。じゃあ椎名にもちゃんと言うんだ?」

「そのつもり。でも千尋と終わってからじゃないとな。じゃなきゃヒロは話も聞いてくんないから」


そう言ってテーブルの上に向けていた視線を上げると、ニヤけ顔と目が合った。


「なんだよ?」

「それにしてもスゲーなーと思って。

だって初恋の相手だろ? 今まで色んな女に告られても誰とも付き合わなかったのは、ずっと椎名を想ってたからか」


両手を上げて伸びをするオサ。

別にオサが言ったようなわけじゃない。

実際そんな早くに俺が自分の気持ちに気づいていたら、こんな事にはなってなかった筈だから。

ヒロの気持ちがどうであれ、こんな周り道はしなかったと思うんだ。