初恋の向こう側


「アズマは夏休みの計画ってないの?」


ストローに口をつけたまま、目だけこっちへ向けてオサが言った。


「夏休みの計画?
なんだよそれ。そんなもんあるかよ」

「だって高校生活最後の夏だよ? 愛莉と考えてたんだけどさ、例えば旅行に行くとか何か思い出に残るようなことしたいよなって」

「いいんじゃない? 行ってこいよ」

「じゃなくてー! 俺等二人だけじゃなくて梓真とそれから…」


そこで口ごもるオサ。

オサにはちゃんとは話していなかった。

千尋とうまくいってないことも、俺の気持ちがヒロにあることも。


「アズマ、千尋ちゃんとはどうなってんだよ?」

「どうなってるって……まだ続いてるよ」

「それでいいのかよ?」

「……」


よくなんかないよ。

早くどうにかしなきゃって、いつも思ってるんだ。だけど。


「アズマ! ここまで来て変な気使ってたってしゃーねーだろ? 早いとこ白黒ちゃんとつけろって。好きじゃないのにズルズル続けてる方がよっぽど傷を深めるぞ。
それに本当に好きな女を放っといて、それでいいのかよ?」