小さく埃っぽいレジカウンターの前で「お世話になりました」と頭を下げた俺に
「御苦労様でした。受験勉強がんばってね」
と店長が目を細めた。
来週から夏休みに入る。
すぐに受験の準備に入るわけでもないんだけど、夏休み前にバイトを辞めることは三年になる前から決めていたことだ。
店を出て通い慣れた路地裏を歩いた。
店先に座っている韓国料理店のオヤジと挨拶を交わし表通りへ出る。
信号を渡った先にあるビルの階段を上がって、その店へ入った。
年期の入った感じの喫茶店、それほど広くはない店内。
「よお」
声をかけると、マンガ本から顔を上げたオサが陽気な笑顔を向けた。
「おーアズマ!」
バスケ部は今夏、県大会行きを逃がしたためオサは先日引退した。
「あれ 一人?」
「愛莉様は塾で~す」
やっぱりちょっと不満気に答えたオサ。
同じくテニス部を引退した愛莉だけど、早速受験に向けて塾へ通い始めたらしい。



