初恋の向こう側


「ううん。鈴井君に聞く前から何度も見かけてたから」

「え?」

「あのバス停で、二人が一緒にいるところを何度も見たことがあるの。
佐伯君には全然気づいてもらえてなかったけど、わたし一年生の時から片思いしてたんだから。
……ずっと見てたんだよ?」


訴えるような千尋の目。

耐えられなくて思わず視線を外した。


「そっか。
でもさ、こんなとこで待ってるより電話かメールしてくれたらよかったのに」


下手な笑顔を作って向けるが千尋の表情は崩れない。


「こんなとこで待ち伏せされて迷惑だった?」

「そんな意味じゃないよ」


俺とヒロの姿が千尋の目にはどう映ったんだろうか……?

気まずい沈黙が続いていた。


「椎名さんって、佐伯君の元カノなの?」

「違うって! そういうんじゃないよ」


俺はまた作り笑いを顔に張り付けた。


「付き合ってた事ないの?」


千尋が不安そうに俺を見つめる。