初恋の向こう側


校門が見える場所まで来た時だった。


「佐伯君?」


呼び止められ振り返る。


「…千尋」


ポストの脇にひっそりと立つ千尋の姿が、そこにあった。

そして俺の前には、立ち止まりこっちを見ているヒロがいて。


「こんな早くにどうしたの?」


駆け寄り声をかけた。


「わたしね、急に佐伯君に会いたくなったの。それでね、ここで待っていれば会えるんじゃないかと思って……。
急に、ごめんね?」


今にも泣きだしそうな千尋が、言いながら校門の方に視線を向けた。その視線の先にはヒロがいる。


「幼なじみなんでしょ?」

「……」

「小さな頃から知ってるんでしょ?」

「鈴井から聞いたの?」


訊き返し千尋の視線を辿ったけど、そこにはもうヒロの姿はなかった。