初恋の向こう側


バスが揺れた。

慌てて吊り革に伸ばした俺の手が、柔らかな肌に触れた。

……ヒロの白く細い指だった。


ビクっとほんのちょっと手を震わせたヒロ。

それを確認し胸のドキドキが増す。さっきより高く大きく。


鼓動が主張するのを意識しながら、俺はその柔らかな手を ――
……そのまま握りしめた。

衝動的な行動だった。

余計な思考なんて皆無で、ただ本能的にそうしただけ。
そうしたくて、そうせずにいられなかっただけ。

そしてヒロも俺の手を解くこともなく。
二人、前を向き無言のまま窓の外の動く景色だけを見つめていた。


指先から伝わってくるヒロの体温、髪の香り、僅かに染まった頬の色……。

その一つ一つを確かめ感じながら、ドクドクと体中に漲るように脈を打つ。


時間なんて止まってしまえばいい。

何処へも到着することもなく、このまま ――自然とそんなことを思った。

でも、期待は当然の如く潰され。

学校の側まで来てしまった時アナウンスが流れて、それを合図に俺達は繋がれた温もりを解いた。