五月に入った。
「やっぱり…」
朝、部屋の窓から隣の玄関を伺っていた俺は、たった今、制服姿のヒロが隣の玄関から出て行くのを確認し呟いた。
千尋と付き合い始めてから、登校に使うバスの時間を早めていた俺。
でも今春から元の時間に戻したというのに、今度はヒロが俺のことをずらしているようだった。
胸の奥が狭まるみたいな感覚。
それは、千尋と一緒にいる時に感じるのとは違う痛みだ。
立ち上がり机の上の鞄を掴んで勢いよく部屋を出る。
「梓真、また早く行くの?」
母さんの声を背中で受け流し、スニーカーに足を突っ込む。
「行ってきます!」
玄関を飛び出しダッシュした。
* * *
角を曲がり公園の脇を通り、走った。
次を右に、それから“きく江寿司”の前を過ぎて ――
「いた!」
調度、バスに乗り込もうとしているヒロを見つけた。



