初恋の向こう側


『好きです』ってのはあらかじめ聞いていたけど、さっきまでの彼女とは様子が違う。

決意に満ちたみたいに堂々としていて、伝わってくるその気迫に圧倒されそうになった。

同時に、胸の中に何かが落ちたような気がしたんだ。

喉もとでつっかえていた目に見えない何かが、心の中へ ――



真っ直ぐに俺を見つめる彼女の瞳は潤んでいるけど。

でもひた向きで一生懸命で、それがなんだかいじらしく見えた。


精一杯伝えてくれたことに、ちゃんと応えなきゃな……。


その気持ちに、ただ答えるんじゃなくて……応えたいって思った。

応えようって、決めたんだ。たった今 ――


「いいよ」


短く発した俺の言葉を受け彼女は、呆然としていた。

ぽかんと口を開けたまま……そして、その頬を涙が伝った。


これから始めればいいんだ。

スタートは今からでいい。

その日のその瞬間、俺は、くすぶっていた心の中のその部分に蓋をした。