初恋の向こう側


信号待ちをしていたバスが発車した時、また揺れて。


「あのさ、とりあえず座らない?」

「は、はい…」


でも、一番後ろの長い席に腰を降ろした俺達に会話はなく、彼女が何処に住んでいるのかなんてもちろん知らないわけで。

けど、本当は早めに何処かの停留所で降りて乗り換えたほうがいいはず……。

でも告られたばっかのこの状況で『何処かで降りたら?』なんて言うのは、さすがに酷だと思った。

そっと隣を伺うと、コートの袖から覗く小さな手は震えているように映り、幼い子供のように丸い頬っぺたが真っ赤に染まっていた。

きっと長い時間、俺のことを待っていたんだろうな……。


バスに揺られながら色んなことが頭を巡っていた。

愛莉に言われたこと、さっきの彼女の告白。

そして……ヒロのこと ──