初恋の向こう側


「実は佐伯のこと訊かれたのって、それが初めてじゃないんだ。最初は一年の時でそれから何度かあって…」


城浜の女の子ね。

特に関心なんてないけど、ぼんやりと考えていた。


そして ――

…あ。

花火大会の時の、あれ……?


「もしかしてそれって、めっちゃ小っちゃい娘?」

「そうそう!」


その前にも一度、バス停で会った娘だ。


「150ちょうどしかないはずだよ、あいつ。

あれでも中学の時には結構人気高くって。でも本人は超が付く程の奥手だから、誰かと付き合うとかは全然なくてさ」


珍しく能弁な鈴井。


「なー、随分とその娘のこと詳しいんだな?」

「え。いやー。
その、実は幼なじみなんだ」


そこへ音を立てて扉が開き、数学の教師が入ってきた。

それを合図にクラスメイト達が椅子を正す音が一斉にして、鈴井も前へ向き直った。