初恋の向こう側


始業のベルが鳴る。

舌打ちをして去って行った小野崎の背中を見送ると、鈴井が尋ねてきた。


「佐伯、城浜学園の安西って知ってる?」

「城浜のアンザイ?
いや、知らないけど。なんで?」


外した眼鏡を拭きながら話す鈴井。


「同じ中学の女子なんだけど。
この前、図書館で会った時に佐伯のことを訊かれたんだ」

「俺のこと?」

「うん。下の名前とか何の部活に入ってるかとか、色々」

「ふーん」


城浜に知り合いっていっても、中学の時の同級がいるくらいで。特に親しい友達もいないけどな。

セーラー服のデザインが可愛いと評判の城浜学園。ウチの学校の制服はブレザーで。

場所が近いからか、昔から城浜とはよく比べられることが多いみたいだ。

どっちの制服が好み?とか、どっちの方が可愛い女子が多い、だとか。

俺も中学の時にオサや他の友達と、どっち派? なんて論議したことがあったな。

オサはいつも城浜派で、俺は決まって深崎派だった。

そんなことを毎度熱く語りあっていたあの頃、いま思うとバカバカしい限りだけど。