初恋の向こう側


「っていうか、最初っから付き合ってなんかないし」

「ハーッっ? だってオマエッ」

「付き合ってる、なんて言った覚えないけど?」


小野崎が絶句した。

でも、本当のことだし。

すると奴は、こんなことを抜かしやがった。


「じゃあ佐伯、俺が椎名に近づいても文句はねーな?」


は?
なんだよ、いきなり……?

別に、文句はないよ。
文句はないけど、ヒロがオマエみたいのを受け入れるとは思えないけど、な。

それより、さ。


「俺に文句をいう権利はなくても、諦めといた方がいいと思うけど」

「どうしてだよ?」


睨みつけてきた小野崎。


「どうしてって、相手が悪いってことだよ」

「相手って椎名のことかよ?」


そうじゃなくて。

イケメンで年上で頭も良くて、日焼けした肌に爽やかな笑顔 ――

……相手が悪いよ。