初恋の向こう側



修学旅行を来週に控え、なんとなく浮かれている教室内。

季節は巡り、早いもので十月に入った。


「修学旅行って、そんなにテンション上がるもんかね」


頬杖えをつきながら呟いた俺に、鈴井が言った。


「そりゃー付き合ってる相手が同級生だとか、付き合ってなくても好きな相手がいるとか。そういう人間にとっては一大イベントだからね」

「ふーん、なるほどね。
そういう意味なら俺には関係なしってことか」


力を失ったように、そのままズルズルと腕を滑らせて広がる視界の角度を変えれば、さっきの俺の発言に聞き耳立てていたのか? いそいそと一人の男が近づき俺の席の前に立った。

断りもなく視界に入りこんできた、小野崎 恭。

コイツってまだヒロのことが好きなんだろうか?
まっ 俺には関係ないか……。


「おい! オマエ、椎名と付き合ってるんじゃなかったのかよ!?」


って、そんな目を血走らせて来んなつーの。

そんでやっぱり、まだ好きなわけだ……。


「いいや。俺とヒロは付き合ってなんかないよ」


力なく答えたら「え。別れたのか!?」と詰め寄ってくる。