初恋の向こう側


「あの、わたし、城浜の二年で安西…」


その娘が何か言いかけたとき

「ちひろー!」

少し離れた場所から声がした。


女子高生風な声の主達が、こっちを見て手を振っている。


「あっ どうしよーっ
……あたし、あのぉ……す、すみません!」


急にキョドりだしたそのコが、またペコペコと頭を下げながら友達らしきグループの方へ駆けて行く。


ちょこまかと走る小さな影に

「何だあれ?」

小型犬みてー。とちょっと吹き出し、俺は再び歩きだした。


花火が上がるたび歓声もあがり、見知らぬ人達の照らされた横顔がやけにまぬけに見えた。


夏休みも残すところあと十日。

ヒロの誕生祝いに何かプレゼントをしてやろうと思ってたけど。

その使う充てを失くした資金をどうしようかなんて、くだらないことを考えながら歩き続けた。