だからあたしは気付かなかった しばらくの間 まるでこの涼しさのような ひんやりとした声をかけられたことに この風に溶けてしまうほど 心地よい声だった 「いらっしゃい」 振り返ると、男がいた あたしと同じくらいかいくつか歳上の その声に相応しい容貌の男だった