狭間に落ちる



私の名前はね

わからないんだ

狭間に落ちた時に

持ってくるのを忘れたみたいで


男は暖炉のそばで

物語を捲りながら笑って言った


湖のほとりで暮らしている

小説家志望の少年が書いたものだった


「他の記憶はしっかり持ってきたのに?」

「その気でいるだけかもしれないけどね」


あたしも

その気でいるだけかもしれない


狭間がただの夢だとは思わなくなって

久しかった