舞蝶.・。*



向こう側の道路の脇に女が呆然と立ってるのが見えた。
違う。あれは莢だ。
その時、後ろの黒いパーカーを着た奴が思いっきり莢を突き飛ばした

その時。大型トラックが猛スピードで角を曲がった。

「キィィィィィィィィッ!!!!」
ランプが莢を照らす。

「莢っ!!!!」
俺は力の限り叫んで走り出した。

だけど。
間に合わなかった・・・。

次の瞬間には地面は血まみれ。
その道路に横たわってる女。

お願いだ。
莢じゃないでいてくれ。

だけど。
そんな願いは虚しく散った。

横たわってる、女の顔は
あの透き通るような白い肌。
あのスッと伸びてる鼻。
あのピンクの大きな瞳。
あの小さいけどプっクリと膨らんだ唇。
あの長くて綺麗な藍色の髪。
あの細い体。

全部が“莢だ”という事を知らせてた。

「莢っ!!!!」
俺は莢に駆け寄って抱えた。

俺は黒いパーカーを着た奴を探す…がいない。