ざわめく駅構内。

出張帰りのサラリーマンや
旅行帰りの老夫婦とか
大勢の人が行き来する新幹線の改札口。
そこに立つユウキの姿を見つけた。


まだ正式にはデビューしてないのに
彼の周りの空気が
やっぱりどこか普通じゃなくて
女の子とかの周りの視線浴びてるのに
本人は全く気づいてないみたいで

ユウキは私の姿を見つけると
笑顔で軽く手をあげてみせた。


そんな彼に駆け寄りながら


「ごめん、遅れた?」

「うーんと15分前。
もしかしてお前寝てたんじゃねーの?」

「違うよ!」


そんなやり取りをしながら入場券を買って
ユウキと共に改札の中に入った。


「あれ?みんなは?」

「もうホームの方に行ってる」

「そっか。
荷物は手ぶら?」

「ああ、全部送ったし」


エスカレーターに乗る寸前
階段と自販機の影に引っ張り込まれ
その大きな胸に抱きしめられた。


「暫く会えないから充電」


なんて耳元で囁きながらキスされる。

その度に足元から溶けそうになって
でも誰かに見られてないかとか
恥ずかしくて背中側が妙に気になった。


「てか離れがたいな。
アキも一緒に東京行く?
だってまだ夏休みだろ?

あーでも明日から毎日仕事だしな。
きっとお前のこと
全然かまってやれねーし」


なんていいながら
本気で悩むユウキが愛しくなって
その胸にギュッと顔を埋めた。


見た目によらず、
彼って結構恋愛体質だったり?
そのギャップが余計に
心臓ドキドキさせられて。


「メールも電話もするし
会いたいってお前が言うのなら
高速飛ばして会いに来るから」


するとそこで東京行き
最終列車のアナウンス。


「あっやべ、
乗り遅れたらマジ殺されるし」


甘い時間はそこで終って
一気に現実に引き戻された。