客電が消えると
鼓膜を突き破るような歓声。


バンド名のコール
甲高い叫び声
口笛、拍手、足踏み。

あらゆる音でもって
バンドの登場を迎える観客達。


アマチュアのライブとは
まるで思えないほどの盛り上がり。


ユウキの言葉通り
スムーズにステージ袖まで到着した私と
入れ違うように
メンバーがステージに消えて行くのが見え
ひときわ歓声が大きくなった。


スタッフとか大勢待機してる
薄暗いバックステージ
縫うようにして進み
ステージがよく見える位置まで着くと


「あれ?アキ!」

「……サクラ」


何処からか現れたサクラが
驚いた様子で私の隣まで歩いて来た。


「どうしてこんなとこに?
……あっそっかぁ!やっぱりアキ
Down Setのファンなんでしょ?

私もいても立ってもいられないで
忍び込んじゃった!
意外と警備ゆるかったし」

「ファンって言うか何ていうか……。
んーと、……そ、そういえばコウは?
ずっと一緒だったでしょ?」


しどろもどろになりながら
慌てて話題を反らした私に
サクラは全く疑う様子もなく


「コウならあっち、フロアにいるわよ。
今夜の記念に
私どーしてもライブ音源
録りたくなっちゃって
1番音のバランスいいとこで
コウが隠し撮りしてるわ」

「サクラ……」


相変わらずの二人の関係に苦笑いした私に
彼女は笑ってウインクを返すと
慌ててステージの方を指差した。


「シッ!始まるわ。
……夢みたい、こんな場所で
彼らのライブ見れるなんて」


最後のセリフ
熱っぽい眼差しで独り言みたいに呟いた
彼女につられるように
ステージを向いた瞬間

全てを破壊するほどのギターの爆音と共に
彼らの演奏が始まった。


今夜のライブ
彼らにとったらまだ序章――。