――アコースティックギターの音色
静かに耳に伝わってきて
誘われるように瞼を開けた。


明る過ぎる朝の白い太陽の光に
反射的に薄目になりながら
回りの景色を眺めると

寝室のベッドに横になった私と
部屋の奥の開け放たれた窓の所
ユウキが足をベランダに投げ出すようにして
こちらに背をむけて座り
ギターを膝の上に抱えていた。


誰に聞かせるでもない
自分自身の為だけみたいな
ささやかな空気の振動。


そのギターの音、
悲しみを帯びながらも
同時に凄く神聖な物にも聴こえて

余計なものが邪魔しないように
ベッドの上微動だにしないで
ただその響きに耳を傾けた。


今初めて気がついたけど
アコギの音って涙腺を刺激される。


少し淋しくて、
聞いてるときの気分関係なく
本能的にどこか泣ける。


昨日泣きすぎたせいで
絶対腫れ上がってる瞼
かなり痛かったけど我慢して開けて
彼の背中を見つめ続けた。


するとふと音が止まり
ゆっくりとユウキが振り返った。


少しだけ構えて肩がビクリと動く。


「オハヨウ、アキ」


拍子抜けするくらい普通の言葉
でも今はそれがありがたい。

朝の光にピッタリなその嘘のない笑顔も。


「……オハヨウ」

「何か飲むか?
それとも先にシャワー行っとく?」

「………」


立ち上がってギターを片付ける彼の姿
ジッと睨むように眺める。


だってユウキ、昨日少しでも寝たのかな?
ベッド私が独占しちゃってたみたいだし。
今夜大事なライブ控えてるのに。


眉間にしわ寄せる感じで
身体を持ち上げながらそんな心配してると


「……さっきから身体に視線が刺さって
痛いんですけど。
ただでさえお前眼力強いのに
穴あくからやめてくれ」


……何それ?

本当は色々聞きたかったけど
真面目に聞いたところで
絶対教えてくれないって確信があったから


「別に何でもない……」

「ふーん。
あっちょっとまっとけよ」