――部屋の外は一面雪景色。

モントリオールで迎える
三回目のクリスマスを目前に控えた
ある日の夕方。


床に直接座り込んで
“ある作業”に没頭してる私の隣には
いつも優しいヴィンスの姿。


「ヴィンス!
これ固すぎてはまらない」

「本当に?
じゃあちょっと貸してみて」

「ワーイ、ありがとう」


――いったい何をやってるのかって?


簡単に言うと
今二人で悪戦苦闘してるのは
毎年恒例となった
ケイへのプレゼント作りで

昔ヴィンスと一緒に作って
誕生日に贈ったリング
ケイがものすごく喜んでくれたから
それ以来彼へのプレゼントは
いつも彼と一緒に作ってきたから。


「アキ、出来たよ」

「うわー凄いカッコイイ!
……ケイ喜んでくれるかな?」

「それはもう120%
俺が自信持って保証する」


そう言ってニッコリ笑う
彼の笑顔に自信がついて
出来上がったもの上に掲げて
クルクルと回して眺める。


今回作ったのは革のブレス。

茶色の厚めでゴツイ革の土台に
シルバーの長四角のプレート
鋲で二カ所止めて
そのプレートには
“Forever in Noise”って文字を掘った。

“いつまでも音の世界で
生き続けられますように……”
って願いをこめて。


――革のブレスのラッピングを終えて
散らかった床二人で片付けしてたら
無意識にため息が出た。


――あっしまった!

って後悔しても後の祭、
ヴィンスは当然
そのため息聞き漏らさないで
片付けを止め私の顔を覗き込んだ。


「アキ、どうしたの?」

「別に何でもないよ」


ごまかすように笑顔を作ったけど
ヴィンスはやっぱり納得してくれず
訝しげな表情を和らげる事なく
私の肩を掴んでその場に座らせた。


そして彼も同じように
私の正面に座ると


「……お母さんの事?」

「うっ!やっぱりヴィンスには
隠し事出来ない」

「当然だろ。
何年アキとすごしてきたと思ってるわけ?
……で、何かされた?
それとも……何もされてない?」