PM1:05


昨日電話で約束した
ハルトとの待ち合わせ場所は
市内イチ大きい外資系CD店の三階
洋楽ROCK売場。


彼との待ち合わせはいつもここで
神経質な割に時間には結構ルーズな
ハルトはまだ来てなくて

彼を待つ合間に
気になるCDをチェックするのも
いつもの事。


売場の試聴コーナーで
新譜のアルバムをチェックしてたら
横からスッと腕が伸びてきて
聴いてたディスクの番号を
誰かに勝手に変えられたから

驚いてヘッドフォンを外し
横を振り向く。


「それイマイチ。
展開がありきたりでタルイ。
聴くなら断然こっち。
難解だけど深い、特に5曲目」


同時にその指先は曲番も変えて
手に持ったヘッドフォンから
爆音が響いてきたから
慌ててそれを耳に戻す。


耳障りなほど激しいギターと
力強くシャウトするボーカル。


その一曲丸々聴き終わった後
私はOFFボタンを押して
ヘッドフォンを元の位置に戻した。


「ヤバイカッコイイ
ハルトこれ貸してよ」

「ヤダ、俺買ったばっかりだし」

「えーどうせもうiPodに落としたでしょう?
ケチ!」


冗談っぽく頬を膨らませると
ハルトは不機嫌そうに私から目を反らして
ぶっきらぼうに呟いた。


「嘘だよ。
お前絶対そーゆーと思って今日持ってきた
後で貸してやる」

「本当?
アリガト!
じゃあお茶奢る」

「当然。
じゃあ行こうぜ」


そうして向かったのは
CD店から少し歩いた裏通りに面したカフェ。


カランと音をたてる
茶色い木枠のドアを開けると
ひんやりとした冷房の空気が肌に心地よく

店内はカウンターと入口の辺りの席に
二組しか客がいなくて
私たちは店の奥の席に向かい合って座り
横の席にはそれぞれギターとベースを置く。


すぐにオーダーしたものは運ばれてきて
ハルトはアイスカフェオレを一口飲んだ後
探るような視線で私の顔を見た。