街灯が点々と道路を照らし
背後から車が何台も
追い抜かしていくのを横目で見ながら
人気のない歩道を駆け抜ける。


左足をかばってるから
固いアスファルトの上で
不規則に運ばれる足音は
短調のメロディを思わせて

こんな気持ちで走ってる時でさえ
音楽が頭を離れない自分が
少しおかしくて

――でも当たり前だってわかってる。


だって私は
あの人達との日々を
過ごして来たから。


母親の子守唄も知らない。
音楽の授業でのメロディーも
右から左だった私が

初めて音楽というものを
きちんと認識したのは
彼のあの姿から。


何をするときも
ずっとギターを抱えてた
黒髪のあの人。


初めて会った時も
黒のエレキギターを
まるで愛しい彼女みたいにして
抱きしめてた。


そうだ、忘れもしない。
ケイと二人で部屋の壁を
水色に塗り重ねた思い出の日には
まだ続きがあったっけ――。