「アキーおはよー!」


翌日の午後。

本番の会場となる
ライブハウス“Club Code”前に
バンドメンバーと待ち合わせ。


予定よりも10分前に着いた私だけど
すでにサクラがキラキラ顔で待ち構えてた。


「オハヨ、サクラ
……んと、その服は何?」


苦笑いで彼女の全身を眺めた私に向かって
サクラはミニスカートから伸びた細い足を
モデル立ちにポーズをキメて
自信ありげに微笑んだ。


トップスは背中の大きく開けた
シフォンのキャミで
バンドでステージに立つには
到底相応しくない。


「これ昨日買っちゃった。
かわいいでしょ?」

「かわいいけど
今日は前座バンドだけの
打ち合わせでしょ?

Down Setのメンバー来ないのに
そんな気合い入れた恰好しなくても」

「甘いわよ、
チャンスはいつどこに転がってるか
わからないじゃない。

私このイベントに賭けてるの!
ぜーったいユウキと付き合ってみせるわ」

「サクラ。
このイベントに参加したのって
バンドとしてチャンスを掴む為じゃ
なかったっけ?」


強い日差しが二人に照り付ける中
呆れ気味に問い詰めると

サクラは横を通過して会場入りする
スタッフらしき人達に
にこやかに挨拶をしつつ
私の方を振り返った。


「あのね、私妥協って大っ嫌いなの。
手に入れられる物は全部手に入れたいの
悪い?」


こんなバカみたいな事
大まじめに言うから
思わず吹き出して笑ってしまった。

結局のところ
自分の気持ちに正直に生きてるサクラが
羨ましくもあったりするから。


「ウィース!
二人ともスゲーもりあがってんねぇ。
ってウゲーサクラお前
なんて恰好してんだよ!」

「コウ!
今なんて言ったの?
聞こえなかったからもう一回言って。

返答によっては
無傷で会場入り出来ないから
くれぐれも注意して発言してね!」

「は?バカか、このアバズレ女!
って痛ッ!」

「最低コウ。
殺すわ……
あんたなんて殺してやるー!!」