銭コ乗せ

―ザバザバ―

陸地にあがったおっさんと俺は、当然のようにびしょ濡れだった。

「あのー、この度はー、ガチガチ、助けて頂いてー、ブルブル、本当にー」

「そんなんはいいって。もう溺れんなよな、おっさん。」

「ありガチブルブルガチ。」

「大事なとこ言えてねーじゃん!!…もういいっていいって。じゃあな。」

その場を立ち去ろうとする俺。

「ま、ままま、待ってください!私にぜひお礼をさせてください!何がいいですか!?何がしたいですか?」

寄りすがるおっさん。

「いや、もう、ホントいいから。俺なんかにお礼なんかしても、もう…意味ねぇんだよ。」

立ち去る俺。

「そ、そんなこと言わないで!!とりあえずっ…!とりあえず何がしたいですか?とりあえずでいいので!ほら!」

すがるおっさん。

「あっ?とりあえず?」

ちょっと考える俺。

「そう、とりあえず。」

笑顔になるおっさん。

「とりあえず…」

とりあえず俺。

「とりあえず?」

とりあえずおっさん。

「とりあえず………寒いわ。ブルッ。」