ずかずかと廊下に出てくるなり
「海堂さん」と男に呼び止められた

「は?」と振り返ると
息をきらして走ってくるあいつがいた

なんだ?

クールでドライで…
まるでクリーニングのキャッチコピーのような男であるあいつが
なんで髪を乱しながら廊下を走ってくるのだろうか?

「久我先生、どうしたんですか?
確か、今日はもう日直じゃないですよ」

「それはそうなんだけど…
朝礼のときに居ないし
学校に何の連絡もなかったから心配で」

さっき携帯に連絡してきたのはどこのどいつだ!

「あれ? どうしたの?
ここは海堂さんのクラスじゃないよね?」

「あ? ああ…まあ。ちょっと」

「え?」

「何でもないよ」

「それで?」

「顔色がイイみたいで、安心したよ」

「はあ…それだけ?」

「ん。それだけ。体調が悪いながら保健室で休んでもらおうと思って」

「あっそ」

あたしはがくっと肩の力を落とすと
半回転して廊下を歩き始めた

そんなことくらいで走ってくるなっつうの