兄貴はボクサーパンツ一枚で
すたすたと自室に戻って行った

あたしはダイニングテーブルに目を戻す

そこだけ
高級レストランのような雰囲気になっていた

テーブルに白いクロスがかかっており
中央にはバラの花がたくさんある花瓶
お洒落なグラスや食器が並び
綺麗にカッティングされたフランスパンが
ご自由にどうぞ…と言わんばかりに
並んでいる

向かい合う椅子2つの前には
あいつが朝から煮込んだと言うビーフシチューが
すでにヨソってあった

ん?

あたしは今
すごいことを聞き逃してないか?

『きちんとした場所でプロポーズをするのが男の努め』

…ってなんだよ

プロポーズってなんだよ

「ちょ…ちょっと待て!」

あたしは慌てて
キッチンに駆け込むと
あいつの腕をぎゅっと強く握った

「ん? なに?」

眉を引きあげてあいつはにっこりと笑う

暢気に笑っている場合かっ!