「聞いてないだろ
あたしは産まないと言っている」

「ん。だから産んで」

「話が噛み合ってない」

「僕は産んで欲しいって言ってるんだ
ここに赤ちゃんがいるんでしょ?」

そっとあたしの腹の上に
あいつの手が乗った

温かくて優しいぬくもりが伝わってくる

嫌なくらい好きって気持ちが
胸の中に溢れてくる

「妊娠ってそういうことだよね?
果恋ちゃんのお腹の中に
僕の子がいる

なら産んで欲しいよ
僕の子を産んで」

「い…嫌だ
産まない
産んでつらい思いをするのは
あんただ」

「どうしてそう思うの?」

「そう思うからだ」

「だから、それじゃあ
理由になってないよ」

「きちんとした理由になっている」

「僕にはわからない」

「わからなくていいんだ
あたしが納得していればそれでいい」