ふと。
体が軽くなった。
恐る恐る目を開けてみると、自分を押さえ付けていた男たちがいなくなっていた。

「あ……れ?」

どうなっているんだ?
そう思い、顔を巡らせると少し離れた場所に、男が1人立っていた。

長身の、やけに長い髪が目立つその男は、ゆっくりこちらに向いてきた。

長い髪は、光の加減か少し青みがかり、その深い紺色のような色がとても綺麗だと思った。


ゆっくりゆっくり近寄ってくる男は、均整のとれた体をしている。顔もキリッと目尻が上がった二重の瞳が印象的な、大変な男前だった。

「ありあ?大丈夫か?」

優しく微笑まれ、思わず見惚れた。
赤くなる頬を誤魔化しつつ、笑顔で答えた。

「助けていただき、ありがとうございます。でも、申し訳ないんですが人違いですよ?」

ああ、人違いで助けてくれたのか〜、と少しガッカ………りして、どうすんだよ!?オレ!相手はいくら綺麗でも男だっつの!!

「オレは、真千田 大和いいます。」

「…………………はっ?」
「いや、だからやまと、って名前です。」

「ありあ?からかっているのか?」

「いや、だからですね?」

「ああ!見つけるのが遅かったから、拗ねているのか?」

「……………」

「すまんな。ありあ?でも、これからは一緒だ。」

「お前なんか、知らんっつってんだよっ!!」

あまりの人の話の聞かない様子に、恩人だというのに怒鳴っていた。

綺麗な瞳をぱちくりさせ、驚いた様子の男。

―あ…れ?なんか、今とおんなじこと……した?

奇妙な既視感に、心臓がバクバク脈打つ。