「エンドルフィン・ライラシック!」

いきなり耳元で、大きな声がして、ハッとする。

「お気付きになりましたか?」

すぐ側に、執事のライがニコニコと立っていた。

「……何だ?」

「稚早様がお見えですよ。」

ニコニコ。
笑っているようで、目が笑っていない。
怒っているのだろう。
ライは、アレと特に仲が良かったから。

「……通せ。」

すでに切ったはずの女だが…。
しつこいようなら、考えもあるが。


「エド!お願いがあるんだ。」

ピクッ。
こめかみがひきつる。
その呼び名は…。

「誰が、その呼び名を許した?」

氷のような声が出る。
きつく睨み付けると、稚早はグッと息を飲んだ。

「ごめ、ん。」

悔しそうに唇を噛む仕草を無視し、本題を聞く。

「何用だ?」

「1人、ちょっと消しちゃって欲しいコがいる。お願いできる?」

稚早の、こういう残酷なところが気にいっていた。
アレと、似ても似つかない、こういうところが……。

「これで、最後………」

だぞ、と言う前に。


聞こえた!
確かに、聞こえた!
待ちに待った、彼の人の声。



けれど…。
これは…………。




『た……す………け』




ガバッと、立ち上がる。
いきなりのことに、稚早は驚いたようだが、そんなことはどうでもいい。
それより…。

ライに振り返り、焦ったように言う。

「出掛ける。」

「えっ!?」

稚早とライが声を揃えて驚く。
朝日が気持ちよい、よく晴れた日に儂が出歩くことはなかったから。
日が苦手な儂だが、今はそうも言ってられん。

「アレが、呼んでいる。」

それだけ告げて、そのまま飛び出した。

ライの、心底嬉しそうな「いってらっしゃいませ」と、稚早の不服そうな「ちょっと!どういうこと!?」という言葉を背にして。