「また、やってるよ…」

はぁ、と溜め息をつかれた。
「ごめん…」

確かに、デート中に悪いと思う。

けど、自分でも無意識なんだから仕方ないじゃないか?

オレ、真千田 大和(まちだ やまと)には、妙な癖がある。
人混みの中や、知らないとこに行くと、まるで誰か探しているかのようにキョロキョロしてしまうのだ。

母親いわく、一歳になるころには、もうこの癖があったらしい。

「ほんと、変な癖。」

ぷんっ、と頬を膨らませ、恋人の早稲 稚早(わせ ちはや)が言う。
ボーイッシュなショートヘアがよく似合う彼女は、涼しげな切れ長の瞳でオレを睨む。

「あー…、でも、そのおかげで稚早とも出会えたし?」

ヘラッと笑いながら、そう言うと、稚早はコロッと機嫌を直した。

「そうだ。なんか、じっと見られてるなぁ、と思ってたんだよね。」

自慢じゃないが、オレはモテる。
染めたわけでもない、茶色のサラサラヘアは無造作にセットしている。それに合わせて、二重の大きめの瞳とキリッとした眉が某アイドルに似ているらしい。