「ちょっと!私の頼み事はっ!?」

屋敷に入るやいなや、稚早が食って掛かってきた。

後ろで、ライが自業自得です、とばかりに知らんぷりしている。

「えっ!?稚早!?」

びっくりしたような大和の声。

「なんだ…。ちゃんとヤってくれるんだ。」

「…………消して欲しい奴とは、大和のことなのか?」

静かな怒りが込み上げてくる。

ライに視線をやる。
ライなら、それで全てを悟る。

「大和さま。主人は、この方と用事があるようです。あちらで、少しお待ち頂けますか?」

にこやかにライが促す。
真っ白の手袋に包まれた手が、奥の部屋をまっすぐに指している。

「でも…、稚早は…」

渋る大和に、ライは言葉を被せる。

「僭越ながら、わたくし、ケーキを焼きまして。味見などしていただければ。」

前世では、甘いモノに目がなかった。
今も、変わらないようだ。