迷姫−戦国時代

菫の墓石など何度も見ていたはずなのに、視界が歪みそれが涙である事に気づいた狛津は泣いてるのを隠す様に顔に右手をあてた





「・・・ハハハ」そして元いた岩に座りこむと乾いた笑い声が口から漏れたのであった







「何で俺、こうなってんだよ。しかも数日しか共に居なかったあんた相手にさ。・・・情けねぇよ」





「反って数日しか居なかったからかもしれません。
狛津さん、逃げてどうなるのですか。逃げたらその後など、変わりはありません」




次の瞬間狛津の感情は怒りに一変し美羽を怒りの含んだ瞳で睨み付けた

睨み付けられた美羽は動じず寧ろ強い眼差しを狛津に向けたのだ




「っ!どいつもこいつも、俺の勝手だ!!」

俺は、俺はもう無理なんだ

怖いんだよ



そう狛津の心の叫びが聞こえた様な気がした




パァン




呆然としている狛津と眉を寄せ苦しそうな表情をしている美羽がいた



美羽は狛津の頬を渾身の力で叩いたのだ







「貴方は、菫さんとの約束を破っております。貴方は彼女に何と申しましたか?」





約束。あれは菫が死ぬ前日に互いに琵琶に誓いあった約束を




―――「誓うよ。
俺はお前の為に、琵琶を弾き続ける。守っていく・・・だから、・・・」






「あの約束は菫が死んでしまっては意味がない。その資格など「何故約束を守らなかったのですか?何故・・・彼女の”最後の約束”を守ってあげないのですか!!」






菫さんは貴方の為に亡くなったのに・・・その言葉を喉から出る所までで抑える。その言葉は己が彼に告げるべき役ではないと、重々分かっているからだ






美羽は興奮状態からなんとか冷静さを取り戻すと次の言葉の為に一旦息を調える







「約束を破る事は菫さんの想いを裏切る事になるのですよ。っ菫さんを愛していましたのなら・・・菫さんが愛した貴方と、貴方の演奏する琵琶を守ってみてはどうですか。男なら、約束を守ってみなさい!!」